夏休み特集●美術館に行こう! 

第2回●東広島市立美術館

はじめに

 東広島市立美術館は、市の中心からかなりはずれた場所にあります。 最初に行ったときは“市街地まで行けば案内が出ているだろう”と地図も持たずに行って、市内をうろうろしても見つからず、あきらめて帰りかけたときに偶然見つけたのでした。 JR八本松駅(市の中心はJR西条駅)を南に徒歩10分。 周りにはなにもありません。 実際に行くには車で行かれた方が便利です。 広島方面からはJR八本松駅前交差点を南に800m、福山方面からは国道2号線西条バイパスの黒瀬町・八本松出口を降りて右手すぐです。 目立たないこぢんまりとした建物ですので、見逃さないようご注意ください。
 この美術館も毎年夏休み期間中に「現代絵本作家原画展」を開催しており、今年で14回を数えます。 私は第9回の「吉田遠志の世界」から拝見するようになり、その後第10回「絵本に見る平和への思い」、第11回「童話―宮沢賢治の世界」、第12回「むかしむかし、あるところに」、第13回原画展と続き、今回の第14回は「広島で生まれた絵本作家」です。(第13回はサブタイトルがありませんでした)
 [詳細]をご覧いただくとおわかりになるかと思いますが、絵本原画展の中では硬派に属します。 つまり、めちゃくちゃ真面目です。 それが災いするのか、あるいは立地条件が悪いのかわかりませんが、会場には殆ど人気(ひとけ)がありません。 私の場合は、これ幸いと、長時間居座ってじっくりと原画を眺めたり、絵本を楽しんだりします。 ここはソファーもあるのでゆっくりと、それこそ邪魔されることなく鑑賞できます。 ここは私にとって一番居心地のいい美術館のひとつです。

柿本幸造「どんくまさん やったね」「もりのおくのちいさなひ」「吉田町の四季」

 一人目は高田郡吉田町出身の柿本幸造さん。 柿本さんの原画を拝見するのはこれが2度目です。 前回は2年前の春、姫路市立美術館の「どうぶつえん展」でのことでした。 見たことのある原画に再会するのは嬉しいものですね。 柿本さんの絵本は、私の中では平面的な絵という印象だったのですが、原画はそんなことありません。 原画を見ると印刷物の限界というものをまざまざと見せつけられます。
 「吉田町の四季」は私が勝手にタイトルをつけさせていただきました。 これは絵本作品ではなく、出身地である吉田町の四季の風景を4枚の絵で描いたものです。 絵本作品もすばらしいですが、私はこの4枚の小作品に魅力を感じました。

甲斐信枝「ブナの森は生きている」

 続いて、芦品郡新市町出身の甲斐信枝さん。 実は新市町と言えばお隣の町。 こんなに近くのご出身とは知りませんでした。
 出品作品は「ブナの森は生きている」。 ブナの森の四季を精細な絵で表現されています。 私は小さい頃よく山に入っていました。 春はワラビ採り、秋は松茸狩り。 甲斐さんの絵を見ていると、そのときの記憶が蘇るようです。 年を経て命つきた倒木。 その周りで次の世代を担おうとしている若木たち。 倒木にはキノコが菌を張り、土に還るお手伝いをしている。 甲斐さんの描く絵は、私の中の記憶と一致します(さるやりすはいませんでしたが)。 思えば当然かもしれません。 育った環境、すなわち「原風景」が同じなのですから。 (世代は違いますよ、念のため)

梶鮎太「そして、トンキーもしんだ」「川のなかのきょうりゅう」

 最後は、竹原市出身の梶鮎太さん。 どちらかと言えば教育的意味合いの強い2冊からの出品です。
 梶さんの絵を拝見するのは、絵本も含めてたぶん今回が初めてだと思います。 一言で言うと、高学年向け教科書の挿絵といった雰囲気の絵です。 つまり、正確さを追求するといった感じを受けます。 それがいい、悪いということではなく、例えば今回の「そして、トンキーもしんだ」では、この正確さ、緻密さが強い力となって読者を打ちます。 正確な史実を伝える絵本には、緻密な絵が似合います。

おわりに

 この東広島市立美術館のものが「絵本原画展」だとすると、第1回のふくやま美術館のものは「原画絵本展」と言うべきでしょうか。 何が違うか。 ふくやま美術館のものは文章に頼りすぎている傾向があります。 1つ1つの絵にすべて絵本の文章が付いていることでわかります。 それにひきかえ、東広島市立美術館のものは、絵を説明するのに十分な文章量にとどめ、あくまで絵を前面に出した展示となっています。 原画展としてふさわしいのは、もちろん後者でしょう。 文章を含んだ「絵本」として原画を見るのであれば、それこそ絵本を読めばよいのですから。

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