第1回●ふくやま美術館
はじめに
ふくやま美術館は、JR福山駅の北、福山城を中心とした福山城公園の文化ゾーンにあります。
文化ゾーン内にはふくやま美術館のほか、県立歴史博物館、福山城博物館、ふくやま文学館などがあります。
そのなかで、ふくやま文学館は今年4月に開館したばかり。
福山市および近隣の市町村ゆかりの文学者に出会うことができます。
児童文学界でも有名なのが「山椒魚」「ジョン万次郎漂流記」の井伏鱒二、児童詩集でも有名な詩人・俳人の木下夕爾のふたり。
絵を鑑賞した後は、文学の鑑賞もいかがでしょうか。
林明子 絵本原画展
ふくやま美術館では、毎年夏休み期間中に絵本原画展を開催しています。
昨年は「堀内誠一 えほんの世界」、一昨年は「ムーミンと白夜の国の子どもたち」、そして今年は「林明子 絵本原画展」です。
入場すると、まずぬいぐるみが出迎えてくれます。
このぬいぐるみ、「はじめてのおつかい」という本に出てくるのですが、本を開いて最初のページ(タイトルのページ)でいすに座っているぬいぐるみのモデルとなったものです。
林さんは絵を描くとき、必ずモデルを用意して描かれるそうですね。
原画と、そのモデルが一緒に見られるというのが原画展の良いところです。
「はじめてのおつかい」からは全点原画が展示されています。
残念なのは、絵に1ヶ所破れた跡があったこと。
絵を鑑賞するときはさわらないようにしましょう。
更に、この「はじめてのおつかい」からは、絵本になる前のスケッチも2点展示されています。
絵本の生まれる経過を垣間見ることができて非常に興味深いです。
続いて「しゃぼんだま」「ぼくのぱんわたしのぱん」「もりのかくれんぼう」「おでかけのまえに」と原画が続きます。
「おでかけのまえに」からもスケッチが4点展示されています。
そして、林さんの代表作ともいえる作品「こんとあき」です。
ここでもまずぬいぐるみが出迎えてくれます。
そう、もちろんこん本人(本狐?)です。
この作品でも林さんはこんを描くためにまずぬいぐるみの制作から入ったそうです。
何点か作られたそうですが、会場には何代目のこんがいたのでしょうか。
みなさんは、こんはどれくらいの大きさだと思いますか?
私の印象では、思ったより大きいです。
原画は全点、そしてスケッチが8点展示されています。
原画は「ふたつのいちご」「きょうはなんのひ?」「おふろだいすき」「びゅんびゅんごまがまわったら」と続きます。
「きょうはなんのひ?」「おふろだいすき」はスケッチも展示してあります。
「きょうはなんのひ?」は全点原画が展示してありますので、まだ読んでない人は、会場で謎解きをお楽しみください。
そして、これも人気のシリーズ「いもうとのにゅういん」と「あさえとちいさいいもうと」です。
展示の都合でしょうか、順序が逆になっています。
両作品ともスケッチが展示してあります。
これは後で知ったのですが、この「あさえ」の世界と「おつかい」の世界はすごく近所なんですね。
気になる人は、絵をじっくりと探してみてください。
続いて「はっぱのおうち」。
文章を担当されている征矢清さんは林さんの旦那様です。
視線を感じて振り向くと、そこにはぬいぐるみが。
「10までかぞえられるこやぎ」と、その他登場動物のぬいぐるみです。
もちろん原画も展示してあります。
最後は「まほうのえのぐ」。
林さんの作品のなかで2番目に好きな作品です。
(さて、1番目は何でしょう)
普通、原画展といえば画家の写真が出迎えてくれるのですが、この展覧会では逆に見送ってくれます。
(つまり、最後にご本人の写真、経歴があります)
さほど広くはない会場ですが、絵の配置も特に問題はなく、(人が少なかったせいもあるのでしょうが)ゆっくりと鑑賞できます。
1点注文を付けるとすれば、会場に椅子(ソファー)がないので、腰を落ち着けてじっくりと鑑賞することができなかったこと。
これはぜひ改善して欲しいものです。
記念講演会「こうして絵本の絵は作られる」 講師:川端誠(絵本作家)
7月24日、絵本作家の川端誠さんをお迎えして、「こうして絵本の絵は作られる」と題して記念講演会が開催されました。
私は川端さんは名前くらいしか知らなかったのですが、すごくお話が上手な方でユーモアにも富み、2時間聴衆を魅了し続けました。
川端さんの最近の作品としては「青空晴之助」シリーズ(文:杉山亮)があります。
まず最初に、絵本をとりまく事情についてお話がありました。
『最近本離れということが言われていますが、その原因は3つ考えられる。
まず少子化で子どもがいなくなったこと。
次に、本以外にゲームなどの楽しいことが巷に溢れていること。
これらにより消費者側の目が肥えてきており、絵本作家がそれに応え切れていない。
最後に、流通の問題。
新作の絵本が出ても、それが店頭に並ぶのは全国で300店ほどの書店でしかない。
大型の書店か、相当児童書に力を入れている本屋以外は、並べてももらえない。』
「わいわいおはなしひろば」でもなぜこどもが本を読まないか、というご質問がありましたが、この回答に通じるものがあると思います。
続いて、実際に絵本を読みながら「絵本の読み方」の解説。
題材は赤羽末吉さんの「かさじぞう」に始まり、林明子さんの「はじめてのおつかい」、センダックの「かいじゅうたちのいるところ」と続きます。
今回は林明子さんの原画展の話ですから、「はじめてのおつかい」の話をピックアップしましょう。
「はじめてのおつかい」では、絵本の中に劇画の手法が多く取り入れられています。
つまり、絵に「カメラアングル」があるのです。
ときにズーム、ときにパン(移動・回転)して場面を効果的に演出しています。
例として26ページ目からの3場面、カメラ位置は固定で、カメラが180度回転して場面を追っているのがわかりますでしょうか。
6〜7ページ目もカメラワークが顕著に表れている場面ですね。
そして、色の効果的な使い方。
赤は明るいイメージの他に安心感を与える色です。
16ページ目からのお買い物の様子で、赤が効果的に使われている(あるいは使われていない)のをとくとご覧ください。
また、文章にはないのですが、林さんは12ページでみいちゃんにけがをさせています。
またけがをさせた以上はその責任をとらなければならない。
それが20ページ目と裏表紙です。
絵本の絵は状況を説明するものでなくてはならない。
2〜3ページ目の絵は状況説明がよく表れているところです。
出しっぱなしの掃除機、湯気を出しているやかん。
これはお母さんが忙しくて手が放せないことを語っています。
またボールの横に半分だけ牛乳の入ったコップが描かれています。
つまり、牛乳が「ない」のではなく、「足りない」のです。
だから、すぐにでも買いに行きたいのですが、手が放せない。
だからみいちゃんにおつかいを頼んだのですね。
状況説明が難しいとき、画家はそれを「描かない」。
その例が3ページ目のみいちゃん。
これはおかあさんのお願いを承諾しているポーズ(いすから降りかけている)ですが、どんな表情なのでしょうか。
この「状況の省略」は読者に想像させるという意味合いも持っています。
林さんは遊び心も忘れてはいません。
探しネコの掲示がありましたが、見つけることはできましたか?
川端さんは、「絵本を何度も何度も読んでいるうちに気づいた」とおっしゃっていましたが、これぞ絵本の正しい読み方と思います。
このような読み方ができる絵本が少ないのも事実なのですが、せっかくの「絵本」ですから絵を「読もう」ではありませんか。
この調子で講演会は続き、あっという間に2時間という時間が過ぎてしまいました。
他にも興味深いお話があったのですが(かいじゅう=おかあさん論とか)、後は聞いた者の役得ということで。
演題から想像していた内容とはまったく違っていましたが、いい方に違っていたので非常に満足して美術館を後にしました。
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